親子の価値観の衝突と克服

親子の価値観の衝突と克服

画家になりたい工藤翔太(しょうた)君

工藤翔太君は、幼稚園の頃から絵を描くが好きで、学校の美術の時間は、いつも楽しみでした。学校以外でも、時間があれば絵を描いていました。

何気ない街並みを見て、どのように描けば、立体的に表現できるのだろうか、豊かな色の表現になるのだろうか、など頭の中は、絵を描くことでいっぱいになります。絵のことを考え、実際に絵を描いている時に、「僕は生きているんだ」と感じる日々を翔太君は送ってきました。
そして、中学校3年生の時、将来画家になりたいと本気で思うようになりました。

両親も安心・安全を求めている

そのことを両親に相談したところ、両親は、激しく反対しました。
親は、社会的常識や経験などを根拠として、プロの画家として生活していくのは、とても困難であると考えました。「将来の翔太のことを考えると、今の時期に断念させることが大切であり、それが翔太の幸福につながる」と考え、反対の意思を翔太君に伝えました。

この時の親の心理も「安心・安全を求めている」という状態です。親が描く翔太君の将来像は、安定した収入を得て、結婚し、子どもを育てながら楽しい家庭を築くことです。その中で、絵を描くことは趣味としてすればよい、ということです。親は、安心・安全を得たいがために、反対せざるを得ないのです。
このような親の価値観から見ると、翔太君が画家になることは、安心・安全を脅かす不安材料になります。

翔太君も安心・安全を求めている

親子の価値観の衝突と克服ところが、翔太君にとっては、親が反対することは安心・安全につながりません。翔太君にとっての安心・安全は、自分のアイデンティティレベルの安心・安全です。絵を描くということは、翔太君にとっては、自分のアイデンティティに関わる意味のあることです。

自分の持っている才能・個性を最大限に発揮し、自分にとって価値ある、納得できる人生を生きることが、翔太君にとっての安心・安全につながっています。価値ある、納得できる人生を生きるためには、自分で自分の人生に責任を持ち、自分で判断、決定することが必要です。

悪循環

このようなことから考えたときに、両親が反対するということは、翔太君にとっては、安心・安全を脅かすことになります。翔太君にとって、親が「自分を攻撃してくる存在」であるように思えてきます。安心・安全が脅かされると、不安になります。不安な気持ちが次のような言葉となってしまいました。

「お父さん、お母さんは、どうして僕の気持ちを理解してくれないのか? 僕は、真剣に画家になりたいと思っているんだ! 本気なんだ!」

この言葉は、親にとっては、安心・安全を脅かすものとなってしまいます。両親の心には、以下のような感情が湧いてきます。

翔太が画家になって、生活できなくなってしまったらどうしよう。生活に苦しむ翔太は不幸な人生を送ることになる。そうなったら、私たち親は安心できない。不安でいっぱいの気持ちになってしまう。
親にとって、翔太君が「自分たち親を攻撃してくる存在」であるように思えてきます。
そして、翔太君に対して、次のような言葉になります。

「お父さん、お母さんは、翔太のことを思って、反対しているんだ。翔太の将来のことを思っているんだよ。親が子どもを心配する気持ちがどうしてわからないの?」

これを聞いた翔太君は、ますます不安になってきます。何故なら、自分の人生を親が決めてくる。自分の人生が自分が納得できるように決められないのは、不安だ。
翔太君とって、安心・安全は、自分の人生を自分が納得できるように自分で決めることができる、ということです。

たとえ大好きな両親であったとしても、自分の人生を勝手に決められたら不安になる。子どもの人生を親が勝手に決めるのは、子どもの安心・安全を脅かす行為となってしまいます。こうして、延々と「悪循環」が起こってしまいます。

悪循環からの脱出

親子の価値観の衝突と克服では、どのようにすれば、この悪循環から脱出できるのでしょうか?

まず、親が子どもの心理を理解することからスタートしましょう。「親が子どもの進路に口出しをすることは、子どもにとっては、不安なことである」ということを理解することが大切です。子どもの安心・安全を脅かすということです。そして、「親が子どもの進路に口出しすることは、親にとっての安心・安全を得たいからである」ということを理解することも重要です。

そのような理解をし、親子の信頼関係を築いた上で、充分な話し合いをしていくことによって、道が見えてきます。
この時に、子どもが情報不足である場合、「プロの画家として自立している人は、ほんの限られた人である。画家として自立することは、本当に困難なことである。」ということを情報提供として、子どもに伝達してあげることが必要となります。

子どもは、安心した心の状態で情報を提供されれば、有益な判断材料として、活用することが可能となります。親子が信頼し合い、お互いに落ち着いた心の状態において、充分に話しあっていけば、最適な道が発見されていきます。

写真:Chechevere, djandyw.com

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